庭は古くからある日本の文化のひとつですが、ひょっとすると多くの人が家の中で美しい芸術と出会える場所なのかもしれません。それならば、お家のどこかに毎日出会える素晴 らしい芸術があるということはとても重要なことかもしれません。 美しく沈んでいく夕日、休み日のお昼過ぎのゆったりとした穏やかなひととき、一日で最 も美しいといわれる、薄闇から段々と明けていく朝。 皆さんに素敵な生活と共に味わう庭を想像していただく為に、いくつかご紹介させていただきたいと思います。
平林繁・環境建築研究所は、住居の外の環境の変化の予想も考慮し、中庭形式にすることによって建てた当初の景色を残すことを考えています。 様々な環境変化が予想される昨今において、この切り取られた景色はまるで 日本の伝統芸能の舞台を眺めている気分にさせてくれます。 環境だけでなく、その家に住んでいる人間の成長をも見つめていく庭は、 守り続けたい美しさや大切な気持ちを思い出させてくれそうです。
アメリカ合衆国にあるVIVERO SOFIAによるこの庭は「外にある庭」ではなく、「中で楽しむ庭」を提示することによって 「自分達は庭をどう楽しめるか」の想像力を豊かにさせてくれるようです。 部屋と部屋の間のような雰囲気の場所に、 こういった色とりどりで様々なおもしろい形の植物を配し、 固定された概念にとらわれないような自由な発想に満ちているところが、 モダンな庭の素敵なところでしょう。
GROUP-SCOOP ARCHITECTURAL DESIGN STUDIOによる、ミドリノイエと題されたこちらの住居の庭は、屋根の一部に天然芝が使われ、空中庭園を造られています。前面道路からの視線の防御と、周囲の緑をいかに取り込むか。 四世帯住宅九人と一匹が快適に過ごせるように。 様々な思考を巡らされた結果、この空中庭園を造ることで北側のお部屋の通風や採光も可能になり、 丁寧に作ることの素晴らしさを感じることができます。
photo by KOUJI HORIUCHI
風建築工房によるこちらの庭は、大きな木と、
まるで物語の中に訪れたような、豊かで美しい緑が配された庭となっています。
家と自然が溶け込むような建築は、人と緑の共生の大きな希望を無意識に感じ、
とても気持ちよい気分にさせてくれるようです。
広い庭を造るときには、是非一度この建築のような「自然」を大きく感じられる、
心地よい庭を参考にしてみたいものです。
和泉屋勘兵衛建築デザイン室によるこの庭も大きなスペースを持っていますが、こちらは先ほどとは雰囲気が変わり、実に日本的な風景が広がっています。 一見素朴なようですが、周りの景観や住居に合わせてシンプルにつくられており、 丸太で造られた腰掛とその後ろにある木によってそっと作られた木陰が ここで過ごす人の美しいひとときをしっかりと想像させてくれます。
フランスよりCABANEOのこちらTerrasse a Aix en Provenceのプロジェクトからご紹介します。こちらは大きな木に作られているツリーハウスとなっており、 木漏れ日と色とりどりのクッション、 真っ白な小さなパラソルのようにも見えるお洒落なライトによって ヨーロッパのゆったりした空気を醸し出しています。 建築家による、人と自然が身近に接することをよく考えられていることを 細かな工夫から感じることができます。
こちらはドイツより、PAUL MARIE CREATIONによってつくられた、たくさんの桜の木とそれを大きく美しく映し出す池の風景。 Pflanzen & Co.のプロジェクトより。 この写真以外からでも、このプロジェクトは草花の美しさを取り込み、 その美しさを人間の身近に感じることの多様で紳士的な試みを強く感じる ことができます。四季のひとときにこのような美の供宴も素晴らしいでしょう。 n
さてこちらはブラジルのLANDSCAPE PAISAGISMOより、開放的でその心地よさがとても伝わってくる、 自由を感じさせるような庭と家の空間が広がっています。 こちらは植物よりは風によって、広い視野で快適な空間を作っており、 家の内側と外側を両方サイドの大きな窓によって開放的にされ、 奥の緑から生活空間を通り抜け、 一本の木の周りに広がるとてもロマンチックな空間を表現しています。
こちらも同じブラジルのESSE ARQUITETURA E INTERIORESによるJardim para lazerのプロジェクトから。 ハンモックチェアと共にトロピカルな空間がつくられています。 小さな植物たちと、白とベージュ、パープルでまとめられた統一感によって 雰囲気はトロピカルですが、穏やかな空気がそこに漂っているようです。 こういったささやかでほんの少しの余裕、又は秘密の隠れ場所のような 役割が、庭にはあるのかもしれません。
GROVES NATCHEBA ARCHITECTSによる、New House, Fulham, Londonの建築物の中庭は、モダンな外観からは全く想像がつかない程、 とても気持ちの良いユートピアのような中庭になっています。 これこそ隠れ家のような、緑と共にひっそりと佇む 独自の空間として成立しています。 生活にゆとりを生み出す5つの庭にも紹介されているように、 庭とは、その場所で生きる人々の思い出の1シーンになる、小宇宙なのです。