国産材を使って建てられた、木の力をふんだんに感じられる家

K.Matsunaga K.Matsunaga
H-HOUSE, 株式会社長野聖二建築設計處 株式会社長野聖二建築設計處 Modern dining room
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古来から木の文化を持つ日本は、国土の2/3が森林で覆われ、自国で豊かな森林資源を賄うことのできる世界有数の国でもあります。しかしながら、経済的な有利さを求めるあまり消費する木材のほとんどを他国からの輸入に頼っているという現状も持っています。そのような流れから、いま日本では国産材の見直しを図ろうと補助金等の助成制度を設けながら、国産材自給率をあげるための動きを自治体が推進している地域も見られるようになりました。今回ご紹介するのは、九州は大分県に建つ、木に恵まれた環境である日田市の木を使った国産材がふんだんに使われた木造住宅です。長野聖二・人間建築探険處が手掛けたこの家は、森林関係の企業に勤める住まい手や学生たちとワークショップを行いながら共同作業で出来上がりました。

共同作業で制作した焼杉が採用されたモダンな家の外観

この家は日田市の郊外にあり、造成地でありながら周辺はまだまだ未整備の空き地が残っている状態でした。そこでつくり手は、木を使った外壁とすることでこの地に新しい景観を創造することを提案しています。外壁の素材にする木の種類は現在たくさんの色や質感のものがありますが、今回は黒い焼杉が採用され、シンプルな片流れの屋根に似合うモダンな雰囲気の外観となっています。この外壁は住まい手や学生たちとワークショップを行いながら制作されたものです。コストや納期を考慮しすでに出来上がった材料を採用することが多い現代ですが、このような取り組みが増えることによって、木への理解を深め地域貢献につながることが増えるのではないでしょうか。

明るい木の色に包まれる室内

この家の内装には国産材の合板が採用され、床・天井・壁面とすべてが木に包まれている空間が広がります。国産材はもちろん、無垢材である木がふんだんに使われることで、心地良い肌触りを感じながら居心地良く過ごすことができる空間に仕上がっています。木を採用するというコンセプトに則り、廃棄の際に問題がある石膏ボードを一切採用しないというこだわりから生まれたこの空間は木の新たな可能性を垣間見ることができる工夫が随所に見られます。はじめは新しい色である無垢材が、時とともに変化していく姿を楽しむことができる現代ではとても贅沢な空間と言えます。

広々と見える工夫がされた吹き抜け

構造には国産材が使用され、屋根を支える天井には無垢材の梁を間近に感じることができます。1階を最小の天井高さにし、通常の住宅よりも低めの設定になっていますが、大きな吹き抜けを採用することで窮屈に感じることはありません。また、この構造や雰囲気を生かし子供室などは屋根裏部屋のようなワクワクする空間になるような工夫がされています。吹き抜けにつながる2階の廊下は広々としたカウンターが設置されることで多目的に使うことができ、より木に触れることや家族とのつながりを持てるような間取りになっています。

木と光の温かさを取り入れる工夫

木の風合いによって全体的に明るく温かみのある空間である場所でも、スペースによっては光が入りにくい部分もあります。この家では光を透過する素材や、天窓を設置する工夫をすることで光を取り込む工夫がなされています。天窓から入る光が、床の透過材を通して柔らかに広がり、照明の効果も相まってとても幻想的で不思議な雰囲気を作り出しています。こうした異素材の組み合わせが空間にアクセントを与え、単調にならないような面白さを感じることができ、この家の魅力をより引き出しています。

国産材をより楽しむことができるLDK

LDKには薪ストーブが設置され、木が身近に手に入る恵まれた環境が生かしながらくつろぎをもたらす空間になりました。炎の灯りは安らぎと癒やし効果があり、木の持つ役割や温かみをより身近に感じることができる装置となるでしょう。壁面の合板は、通常内装に採用される石膏ボードよりも強度があります。吹き抜けを利用した天井の高さがあることも利用してクライミングホールドを取り付け、遊び心のあるスペースが生まれました。ただ内装材に採用するということだけではなく、木の持つ力を体感できるこの家は国産材の普及や良さについても数々の発見ができるきっかけとなることでしょう。

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