160年前の記憶が蘇る。土蔵のゲストハウスリノベーション

K.Matsunaga K.Matsunaga
classic by 兵藤善紀建築設計事務所, Classic
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リノベーションは、一から始めるよりも簡単だと感じる方もいるかもしれません。しかし、新築と違いもとの躯体がある建物は、豆腐を切るように分けられるものではないため、既存の建物を慎重に扱う必要があります。だからといって取り壊して建て替えをしてしまうのは簡単ですが、歴史を重ねてきた風格や趣は新築では得られない財産です。今回ご紹介するのは、約160年前に建てられた土蔵をゲストハウスにリノベーションしたプロジェクトです。躯体の痛みや耐力が厳しく、取り壊しも検討されたほどでした。しかし、依頼主の強い思いを汲み取り、兵藤善紀建築設計事務所はこの土蔵を蔵ハウスとして見事に再生しています。

Before:約160年前に建てられた土蔵

約160年前という長い歴史を持つ建物。調査をしてみると、実は二つの異なる時期に建てられ、屋根で一体化されたということがわかりました。現代ではなかなか見られない佇まいが印象的な外観です。

After:土蔵の佇まいを生かした蔵ハウス

印象的な土蔵の外観形状はそのままに、日本らしい鎧張りの意匠を取り入れた風情のある外観に生まれ変わりました。どっしりとした風格の鎧張りは、見る側に迫力を感じさせます。無垢材の色は年月を重ねるごとに色や風合いが味わいを増し、さらにここから歴史を重ねていくのが非常に楽しみな存在となりました。人工的な素材や、新しいものがよしとされる時代の動きもありますが、こうして伝統的な技術や素材を使いオリジナルの蔵ハウスとして日本らしさを継承していくことは今の時代だからこそ必要だと言えます。

Before:物置や裁縫教室として使われていた経歴

リノベーション前は物置としてつかわれており、過去には裁縫教室として利用されたこともありました。その際に設けた多数の窓開口により、構造的な耐力が不足し建物自体も傾いていました。あちこちに老朽化による腐食が見られ、とても長くもたないだろうとの判断もあり、当初は取り壊しも検討されたほどでした。

Before:土台の交換と傾きも補修

構造の腐食がかなり進み、耐力も不足していた土台を新しいものへと入れ替えをされました。建物全体をジャッキアップし、新しい土台の設置をするとともに建物の傾きを同時に補正する作業が必要でした。

After:ゲストが和やかに集う空間へ

ゲストハウスへとリノベーションされた土蔵は、もとの蔵の雰囲気を生かしたこともあり、大きな開口部はありません。この空間は、小さな開口部のほんのりした明かりが入り込み、まるで秘密基地を思わせます。依頼主は週末に気のおけない友人たちと囲炉裏を囲みながら呑み交わせるような和やかさの生きるスペースとして使えるようになりました。ヒノキの無垢材フローリングや漆喰壁仕上げと自然素材が採用された内装はとても優しく温かさを演出します。階段箪笥はこの蔵ハウスのために購入され、実際に2階へいくための手段として機能しています。

After:趣のある空間のトイレ

スリット窓を設け、間接光として空間を演出されているトイレは、櫛引仕上げがされた壁面に陰影を与え趣ある雰囲気を生み出します。スリット窓の中間には生け花を添えられる小さな棚があり、このゲストハウスに集う世界からのゲストはもちろん、日本人にとってもはっとする美しさを思い出させるに違いありません。日本にとって、トイレの演出や文化、機能は世界に誇るポイントのひとつとも言えるいま、内装や演出は非常に重要な要素になります。蔵を生まれ変わらせた蔵ハウスに集う人々にとって、このゲストハウスはきっと忘れられない場所のひとつとなるでしょう。

After:土間を利用したキッチン

このゲストハウスには、自由に使うことができるキッチンが設けられています。墨入りモルタルを使用し独特の色むらが趣のある雰囲気に、もともとの構造材があらわになった、蔵ハウスならではの味わいを感じます。バーカウンターを設けて造作し、アイランド型キッチンとすることで手軽な立食パーティー風に楽しむこともできるでしょう。背面には、透過性のある素材を使い採光と演出を兼ねた収納があります。全国や世界各地からゲストが集うことが想定されたゲストハウスは、さまざまな出逢いとつながりを生むことができる場所となります。それぞれ食事やお酒を楽しみながら、未来を生み出すきっかけが生まれる場となるかもしれません。

リノベーションについては、こちらの記事でも紹介しています。

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